コロナウィルスと農業

新型コロナウィルス(COVID-19)で,大企業はリモートワークを導入するなど先進的な取り組みを導入しています。ZoomやSkypeといったアプリによって,大企業のような資金力のない中小企業までもそういった取り組みができるようになりました。

しかし,農業は?

人が食べる物は,データでもなければ,電気でもないわけですから,農業はリモートワークするわけにはいきません。農業は現場の産業ですので,現場から離れた働き方はできないと思われます。

当職は,医療のことはまったく分からないので不正確なことを記事にすることはできませんので,農家の方々が感染しないことを願うほかありません。

行政側の動きとしては,農水省が,事業者向けとしては「新型コロナウイルス感染者発生時の対応・業務継続に関する基本的なガイドライン」を発表していますね。そのほかは,経済的補償を目的とするリリースが多いようです。

個人的には,花を飾る提案をしているのが少し興味深いなと思ってしまいました。食品を媒介としてコロナウィルスが感染した例は報告されていないというのは,国民の不安を打ち消すためのリリースだと思うのですが,花から感染するおそれなんて考えてもみなかったので,これを機に消費を促しているのか,あるいは農水省側ではすでに花の消費が減少しているデータがあるのか。。。不思議ですね。いずれにせよ,農水省が日本の農業全体を守ろうと思っているのがなんとなく感じられてうれしいですね。

こちらのHPでも経済的補償の対応をまとめたいと思っています。

【連絡】00 自己紹介

はじめまして。

弁護士の井上界と申します。

この度,農業,畜産etc. 食品をとりまく産業全体に対するHPを開設いたしました。

私は,元々東京に生まれました。その後,小学生の頃に兵庫県の田舎に引っ越しました。それはもうとんでもない違いがあり,東京では同級生200人ほど居たのですが12人に減り,家の壁は壁紙から土に変わり…。なかでも大きな違いは,サラリーマンであった親が養鶏農家になったことです。

養鶏場での体験は,ほかの人にはないものばかりです。

餌をやったりするのひとつをとっても,牧場物語(ゲームです)ほどきれいなものではありません。鶏は排泄の場所を決めませんから,そこらへんにフンがあり,長靴で鳥のフンを踏むのは当たり前です。雨の日なんかは一面中ドロドロ,ぬるぬるしていてお世辞にも「きれいな世界」ではありません。

そして,なにより産業動物ですから,いつかは自分の手で解体します。これも,世間一般の人が考えるであろう「きれいな世界」ではありませんね。鶏の胸を開けて内臓(ホルモン)をはじめて取り出したときの映像はいまでも鮮明に覚えていますが,世間一般に受け入れてもらいやすい作業でないことは想像に難くありません(その一方で,解体を行う人にとってはごく正当な作業です)

とはいえ,市民が食べている肉は,誰かが育てて,そして誰かが殺した肉にほかなりません。市民が考えるであろう「きれいな世界」ではない作業をやっている人達こそが,かけがえのない皆様の生活を支えてきたわけです。それにもかかわらず,なぜ,鶏肉はあんなに安いのでしょうか。なぜ,卵はあんなに安いのでしょうか。むろん,さまざまな経営知識によって現在の市場が出来上がっているのですが,もうちょっと適切な価格設定になってもいいんじゃないかな,そう思っているのが正直なところです。

このような原体験と公平感に対する違和感がセットになって,私は,農業・畜産業を取り巻く食品産業を支援するようになりました。このHP「ごはんのみらい」では,そんな農業,畜産業を含めた食品産業に対する情報提供を行っていきますので,よろしくお願いいたします。

【労務】01 休業要請と動物産業

コロナウィルスにより,兵庫県では休業要請がなされました(兵庫県/県内の事業者の皆様へ ~新型コロナウイルス感染症に係る休業要請等のお願い~)。

休業要請(特措24条9項)の効力は,事業者に対して休業を義務付けるものではないと理解されています。したがって,事業者としては法的には営業を続けるのも自由です。

もっとも,街を歩く限り,営業を行わないという選択をする事業者は相当な数に上ります。感染リスクや経費削減などいろいろな理由があると思われますが,あらゆるお店がしまっている現状です。

もっとも,動物を扱う業者の人たちにおいては,完全な休業という決断はできません。動物は生きていますので,エサが要ります。多少世話は減らしても構わないかもしれませんが,完全に世話を断つことは(経営判断として)できないでしょう。

たとえば,動物園の動物の世話は誰がするのか。飼育員さんです。いま,このコロナの時期も飼育員さんは働きづめであると推察されます。

ところで,法律では,事業主(使用者)は,❶『休業』がされていて,❷ 休業が『使用者の責にきすべき事由』によるときは,平均賃金の6割を休業手当として支払う義務があります(労基26条)。

ここで,❶『休業』というのは,労働をなしえなくなることをいいます。

さて,ほとんどの動物園は休業要請により休園しているようです。ここで「休園」という言葉を用いたのも,飼育員さんは飼育業務を行い続けていて,❶『休業』は行われていないからです。したがって,飼育員さんには休業手当は出ません。

これで,え,出ないのかよ!と突っ込みを入れて頂く前に知っておいていただきたいことがあります。

それは,飼育員さんが飼育業務を行い続けていて,労働義務を尽くしている限り,事業主は10割の賃金を支払義務があるということです(飼育員さんは10割のお給料を請求できます)。動物園が休園になって,売上が0になっても(少なくとも休業を理由に)給与をカットすることはできないということです。動物園の経営者の方には,動物の経費がかかる(しかもかなりかかります‥‥)ので,人件費を抑えたいという心情は理解でき,心苦しいところですが。

いずれにしても,このようにみていくと休業要請というのは,動物産業においては,正確には「営業」の自粛を意味しているのであって,決して休業をしていないことがよく分かります。

少し法律の話に立ち入ってしまいましたが,動物産業を支える人達はいまこの瞬間も命を守るために休んでいない,そういうことを理解して頂けると幸いです。そして,コロナが収まったらまたみんなで動物に会いにいって頂きたいと願ってやみません。